(寒冷地での住宅建築) |
九州は、太平洋・東シナ海沿岸部は暖かいですが、中央部の阿蘇・くじゅうや九州山地の山間部付近は寒冷地も多く、そんな地域に別荘や永住用の住宅を建てる予定や希望がある人の場合は・・・以下が「必読」のポイントです!
2013年、平成25年の1月・・・・今年は寒いですねぇ。。
昨年の12月に、場所は阿蘇郡南小国町の「瀬の本高原(標高1,000m)」に、私の仲介で土地を購入された方が 家を建てられました。 この南小国町の隣接の産山村にも、もう一人の方が家を建てたのですが、この周辺は熊本県内でも正真正銘の「寒冷地」であり、冬場の気温はマイナス15度にもなる 場所であるため、私はこんな「寒冷地」に土地を仲介した時は、その買主さんに対して「建物建築時の建物の構造に関しての助言」を必ず語らせて貰っています。 この地域では12人の方にお売りしましたが、助言どおりに建てられたのは僅か2軒です。 何しろ冬はマイナス15度ですから、冬場の寒さは半端じゃありません。 で、先日、出来立てのそのお宅を拝見してきました。 晴れの日中でしたこともあって、暖房稼働なしで家全体が暖かなのには驚きました。外の気温は2度だったんですが・・。 施主の方曰く、「もうー、熊さんの助言どおりにして良かった!!こんなに暖かな家は経験上、他に知りません!」 と言われてました。不動産業者冥利ってやつです。 瀬の本や九重辺りの寒冷地での家を建てる仕様条件は、基本的考えはまさに「北海道に習え!!」なんです。 つまり、 1 玄関は2重ドア(寒い玄関を完全に居室と切り離す・・シャットアウト) 2 2階を作っても、1階と2階は独立させる。(2階に上がる階段には必ずドアで仕切る。基本、吹き抜けは禁止) 3 たとえ、吹き抜けがあっても、吹き抜け空間は独立させる。(部屋に通じる廊下にドアを付ける。) 4 風呂場の素材は石やタイルではなく、「樹脂製」にする。 5 窓はペアガラスサッシ、もしくは2重サッシにする。 6 床・壁・屋根には断熱材(吹付け充填ウレタンフォーム70ミリから150ミリ見当)を敷設する。 7 夏場と冬場の太陽光の取り入れを基準に軒の幅とサッシの大きさを計算して施工する。 8 寒冷地の場合は、シロアリのリスクは少ないが、やはり予防対策は施す。 9 建物周りに太陽光を遮る庭木は植林しない。 でも、やっぱり殆どの人は、こんなふうにしないんですねぇ、残念なことに。 この知識も私が不動産業者になって実際北海道の民家にお邪魔させてもらって修得した現実の 実態だったんです。普通の九州人はわざわざ北海道に行ってまで、家の様子を見て来ないですからね。 その昔、あれは中学時代だったでしょうか・・・古文で吉田兼好の「徒然草」の一節に 「家の作りやうは、夏をむねとすべし。冬は、いかなる所にも住まる。暑き比わろき住居は、堪へ難き事なり」 なんてクダリがありますが、これは実際はどうなんでしょうか? 私は現代では逆のような気がするんですが・・・兼好法師さんが間違っていませんか?(笑) さてさて、次の文は、2012年に私の所属する「熊本県宅地建物取引業協会」の会報誌「宅建くまもと」に掲載された業者さん向けのコラムです。執筆者は私です。 業務の中で、所有の中古別荘を売りたい人から電話があって、実際に現物を見に行くと、「別荘のイメージのみを優先させ、居室としての実生活を完全に無視した建物が如何に多いか!」という現実と、その建物プランにアドバイスすら行わなかった建築士と不動産業者への失望を感じたことから、同業者さん向けに書かせていただいたものです。 以下、そのコラム文です。一般の方の建築の参考と、業者さんへのアドバイスとなれば幸甚です。 この20年間、田舎不動産に限定して売買の仲介をやって参りました。 その多くは地元の方が所有する農家住宅や、街の方が週末利用するためにセカンドハウスとして田舎に建てられた家等です。 地域としては、阿蘇や小国、産山、菊池、山都、球磨などの高冷地からの物件が多数を占めていました。 セカンドハウスとして利用されていた「中古別荘」の仲介を多数するうちに、これら物件の「共通の問題点」を知ることができました。このことが皆さんの「知識(パワー)」となれば幸いです。 まず、山間地域の寒冷地において、平地よりも明らかに「寒い地域」だと判っているのに建物の造りが、より「寒い建物」になっていることに驚かされました。(笑) 玄関が吹き抜けにしてあり、一枚のドアだけで外と隔離されていたり、さらに間仕切りなしで、そのまま続きでLDKとして使われていることが多いのです。 LDKには山の別荘の主役らしき高そうな輸入薪ストーブが設置されており、建物のプラン段階から、いわゆる「薪ストーブ中心の、暖房能力を過信し過ぎた家の設計(間取り)となってしまっている」ことが間違いの原因になっています。 吹き抜けの上部には2階部分やロフトがあるわけで、その上部と1階の床面との温度差は30度以上です。二階は半袖Tシャツ一枚、でも1階はジャンパー・・みたいな・・。 「LDKがあんまり寒いので、フローリングにコタツを入れてます」 と、少しミスマッチな部屋の雰囲気になっている場合が多く、当初考えていたセカンドハウスの優雅でスマートなスタイルとは、この「室内温度差」が原因で、かなりの「想定外」を生じさせているようです。 次に、極めつけがお風呂場です。「別荘=岩風呂」という図式を、殆どの人が持っています。 「冬場の気温が0度以下の時に、お風呂場の床の石も凍っていることがあって危ないです。また給湯の温度を75度で溜め始めても満杯になる頃には40度くらいになっていて、この岩風呂を作ったことを一番後悔しています。お風呂場が寒すぎて、入る時に気合が要ります!!」 とは、オーナーの奥様からよく聞かされる言葉です。 さらに、寒冷地の建物なのに冬場不在時の凍結防止の為の水道管の「水抜きバルブ」が取り付けてなかったり、トイレや台所の水道管ヒーターも新築時より設置されていないなどが原因で、凍結割れで家の中が水浸しになった経験をお持ちの方も少なくありません。 「あまりにも寒い家なので年を追うごとに利用しなくなりました」というのが一番多い売却理由です。 結論ですが、寒冷地においては、 2重ドアの玄関、二階への階段はドアや間仕切りなどで隔離し、吹き抜けにしないのが基本で、もし予算が許せばペアガラスや二重サッシ、床暖房を付加されることをお勧めします。 そしてお風呂は、石張りでもタイル張りでもなく、「樹脂製」です。 また、将来的に成長する樹木の陰にならないような位置に家を建て、「日当たり」が後々まで確保できるように考えるのも凄く大切なことです。太陽の日当たりは最高の暖房ですから。。 セカンドハウスを新築するときは「夢と見栄」が頭を駆け巡り、建物の周囲の環境とその利用の本質の判断を鈍らせてしまうことが多いようです。 もしも寒冷地において、セカンドハウスを建てる目的のお客様に我々宅建業者が関わった場合、是非ともこのような基本的な事例を紹介し、冷静さを取り戻すようなアドバイスをされてはどうでしょうか? ひょっとしたら、あなたの不動産業者としての「的確さ」や「信頼性」が、得られるかもしれません。 |
|