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無免許ブローカーに気を付けろ!!



"騙され人"列伝 (その壱)
一般人が認識不足である「農地法」を利用し、土地を売りさばくブローカー。作者も脱帽する見事な騙しのテクニック!!

元田さん(仮名)は某公務員で53才、バブル崩壊直前の平成2年に新聞の3行広告を見て業者の灰原氏(仮名)と知り合った。
「2000平米1000万電水有り、眺望良」
とのことであったので、早速電話をし、現地を見学するようにした。
背広姿の灰原氏は「阿蘇中央森林組合ログハウス建設課」云々などと書いている名刺を渡している。
元田氏はその名刺を受け取り、灰原氏を当然ながら森林組合の人間と思い、完璧に信用していたようだ。
ただ、灰原氏は「これからの連絡は自分専用の自動車電話に掛けてくれ」と言うことだったので、当時としては自動車電話は羽振りのよい不動産業者などは持っていたが、一般的ではなかったので、森林組合の人間が所持していること自体がちょっと不自然とは感じていたようだ。

ともかく、現地を見せてもらい、その景観の良さ、地勢の平坦さ、が気に入ったがその日は即答をしなかった。実はその土地の当時の現況は「田」だったので、いくら土地のことを詳しくない元田さんでさえも、 「農地は売買が難しいと聞いてますが・・・」と言うと、
即座に、灰原氏はこう答えたという、
「最初は仮登記にしておきましょう。ボクは農業委員会には仕事上、顔が効きますので、1年以内に私が本登記にしておきます!! 元田さんは1年待てばその後は自由に土地を使えます!!」----------と。

すらすらと自信のある口調に元田さんは「完全に信用した」といいます。
後日、灰原氏からの電話で、再び会うと、灰原氏曰く、「もう私道の工事も始まり、同時に水道の配管も始めています。2ヶ月でこの田んぼもガラリと変わりますよ、それに地主が急いで返済するお金が必要なので100万値引きすると言ってますので、900万です。もし決めるのなら早い方がいい、他のお客さんにも 見せてますから・・」と言われ、 (実際にユンボが1台現場で道路作りのために土地を掘っていたらしい。)
元田さんも少し気が焦り、購入を決断したというわけです。
最初に手付け100万を灰原氏の口座に振り込み、2度目の決済は灰原氏が指定の銀行に来て、仮登記に必要な元田氏の住民票や捺印との引き替えに現金を手渡した。後日、仮登記の登記済証が郵送されて来て、以来、灰原氏とは一切連絡が不通になったということです。

さて、それから4年後にボクの事務所に「売り依頼」の1本の電話が入ってきた。そして現地で待ち合わせ、その電話の主とお会いする事になりました。その物件は登記簿地目が「田」のままで、私道の建設もされず終いの現況が草茫々の荒れ地で、しかも「所有権移転仮登記」のままの土地でありました。

ボクから一言!!
この話のキーポイントは「森林組合の職員」であることをたった1枚の名刺を受け取っただけで何の疑いもなく信じたことが、そもそも非常に「甘い」です。せめて、その「阿蘇中央森林組合」とやらに電話するなりのことはしなくてはいけません!! まぁ、ボクの記憶では「阿蘇中央森林組合」というのは、いかにも(タコにも)在りそうですが、実は似た名称はありますが、存在しない名前なんです・・・・(笑)。それに「ログハウス建設課」なんていう付録までつけて、建物請負までして騙そうとしてたんですかねぇー。
驚いたのは「自分の顔で、地目変更をして差し上げる」というのが、「田舎」のなーなー主義が実在することの「信憑性」を高めている材料を、上手く使っている灰原氏にはボクは脱帽しました。これは「田舎では顔見知りの間で頻繁にこういうことがまかり通っているのである!!」という、街の人間が誤った理解を持っている事をすでに知っている人間こそが絶大な自信を持って使う「手」なのであります!!!   田舎ではどんな許可や認可でも人間関係一つで「OK!!」だと都会人は信じているモノなのです。そこら辺を逆手に取り、許可が受けられそうにない面積の「農地」を、モノの見事に仮登記でお金をせしめるところが偉い!!
GREAT!!   (感心している場合じゃーない!!  笑)


元田さんはその後どうなったか?
はい、未だに仮登記の「田んぼ」をお持ちです。登記簿上の前所有者工藤氏とは顔見知りになっておられ、「これから、どうやって本登記にするかなぁー」と事業計画を未だに悩んでおられます。
そうなんです、前所有者工藤氏との協力で農地法5条許可申請を出すしか手はありません。

ところで登記簿上の前所有者工藤氏は例の灰原氏からは当時、元田さんの土地分として300万程度を受け取ったらしい、ということです。

「私はこの辺では顔が効くので大丈夫!!  安心して任せて下さい」の言葉に前金などを支払わないように!!


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